2005年4月 


 4月大歌舞伎 十八代目中村勘三郎襲名披露 昼の部
   (2005年4月16日)


   
ひらかな盛衰記 源太勘当
   
ほんと、源太って変なキャラですねー。すっごく強いけど、優男。
   (優男だけど、すっごく強い ではなく)
   粗末ななりに着替えさせられて引き出される時なんか、たよたよっとくずれたりして。
   なぜにそんなに受けくさい!(すみません こんな表現で)
   でも、強い…うーーーむ
   
   今回思ったのですが、勘太郎と芝のぶちゃん、お似合いでかわいいですね♪
   芝のぶちゃんは、一見すっごい古風なんだけど芯の強いハッキリした女の子が似合う〜(*^。^*)

   源太の勘太郎が端正で頼りなさそうなせいか、必要以上に目立つ弟(海老蔵)。
   (ただ、現代風の間投詞、やめてくれないかなあ本当に。)
   着替えて出てきたときの衣装の強烈な色合いは、
紙一重でした。
   みかん色に濃い紫の柄、袴は白と黒の段にそれぞれ龍がのたくっている。
   素養がないので、柄や模様をどう表現したらいいか分からない。
   ウルトラスーパーポップでした。いや、キッチュ。アンダーカバーな感じ。
   しかし、見ているうちに、だんだん慣れて、かっこいい気がしてきた罠。
   こりゃ、この顔でないと似合わないね。
すごいぞ海老

  
 京鹿子娘道成寺 
   
踊り上手の新勘三郎さんだから期待していましたが、微妙だなあ(^_^;)
   変な上下動があるし(たてノリ??)。
   特に後半、あれははっきり「荒っぽい」って言っていい気がする。
   鞨鼓と鈴太鼓をぶち壊しそうな勢いで、すっごい音がしました。
   今まで一番荒っぽかったのは、菊五郎さん(T_T)の花子(袂ぶん回し)でしたが、
譲るよ豪快女王の座
   
巫女(しかも、蛇の化身)のトランス状態、と考えることにします。
  
   面白かったのは、これまでで一番、白拍子だと思わせたこと。
   白拍子は遊女でもあるわけで、色っぽくかわいくむっちり、
   しなを作るのに慣れている様子がしました。
   それから、粘着質のストーカーっぽい怖さがにじんでいたこと。
   どこだったか、目尻が下がって色っぽくだらしない感じの「近江女」の面を使う流派がありますね、能で。
   見たことはないけど、きっとこんな感じだよ。
   生々しくて、ねっとりじっとり。家の前の公衆電話から、無言電話かけながらこっち見てそう。
   他の花子は女神っぽいことが多いので、新鮮でした。
   さらにそれから、押戻し前に本当に鐘の中に入りましたね!
   
   それにしても、所化の豪華なこと。四天が美男なこと。


  
 与話情浮名横櫛
   
申し訳ないけど、膝が限界でした(TдT)。集中力なし。
   仁左玉の美男美女。これが悪けりゃ金返せ ですね。
   蝙蝠安はそれほどでも……(^_^;)
   今月は菊五郎さんはいませんが、木更津の場面に、
   こりゃズルイ!と思うくらいかっこいい江戸っ子おじさんが1人。
   菊十郎さんでした。素敵! 反則だよ〜〜〜 決まりすぎだよ〜〜〜(もうメロメロ)



 4月大歌舞伎 十八代目中村勘三郎襲名披露 夜の部 
   (2005年4月23日)


   毛 抜
   
振られても余裕のある、ちょいワルおやじの大活躍。
   団十郎さんが、元禄時代の絵そのままに、さらに美化したようでハンサムでした(*^。^*)
   (あまりかっこいいので、プロマイドを買おうと思ったけれど、
   見ているうちに、
団十郎さんがかっこいいのは当たり前な気がしてきてやめました。
   しかも、かわいすぎるよ団十郎弾正。ちょっと大人気ないところもイカス。
   すみません、これから下ネタ入るんで、それでもよい方は反転して見てください。


   弾正は、美少年も美女も口説いてあっさりコテンパンに振られるんです。
   女のほうは、いきなりそう来たら、このエロオヤジが!となるのは当然なのですが、
   若衆のほうは、今ひとつピンと来なかった。
   手を握られてべたべたされるくらいなら、「なんと物堅い」となるなあ、と。
   ところが新橋で、松緑の弾正を見て分かりました。押し付けたんですな(^_^;)
   悪友のHに言ったら大笑いされた。
   馬の稽古といいつつ乗りかかって揺さぶれば、ズバリな行為だったわけで、
   そりゃ激怒するわな。品よくやっていれば分からないけど。



   口上
   …は、再び省略。富十郎さん、ちょっと長い。左団次さんの「後ろから音」話披露。
   向かってきた瀬尾と一緒で、有名な悪い話です(^^)


   籠釣瓶花街酔醒
   
今回の次郎左衛門は、好人物ですね、終幕以外は。
   楽しいけれど根は真面目な、誰からも好かれそうな人でした。
   遊びっぷりもスマートで粋、控えめでいい感じです。
   しかし、八ッ橋のほうも、いやな女という訳じゃない。
   追い詰められて、もう何もかもイヤーッ あたしをほおって置いて!みたいな。
   だから、この愛想尽かしはきっついですね。
   憎める奴がいたほうが、本当はすっきりします。見ている分には。
   カネに飽かしてトップ遊女を買っていい気になっている、見てくれのよくない田舎者とか、
   自分と間夫のことしか考えないエゴイスティックな遊女とか。
   でも今回、本当にやな奴は、釣鐘 権八だけ。こいつは手に負えない。
   あ、次郎左衛門の友達もカンジ悪い。モテないだろうなあ、こいつら。

   数ヵ月後に出直してきたときの次郎左衛門は、
明らかにヤバいです。
   張り付いた笑顔。目元、口元の黒ずみ。
   八ッ橋に階段の下を見に行かせ、その間にカーッと目を見開いて足袋を脱ぎ捨てる。
   (そして、座布団の下に隠す。めっちゃ早ッ)
   恨みのこもった凄まじい目つきで八ッ橋を斬殺。
   口も、片側にひん曲がって、ホラー映画に出したいようです。
   あんな顔ができるカンちゃんの人格を疑いそうになりました。

   現在、上演されることのない場面では、祟りで次郎左衛門はあばた面、殺人鬼になったんだそうです。
   祟りでなきゃこんなにもつれないよな、確かに。




  KITCHEN
   (2005年4月22日 シアターコクーン)

   痛い芝居でした(;_:)
   ある大衆食堂の厨房で働く人々の1日です。
   トゲトゲしてキレそうな若いコック、
ペーター(成宮寛貴)はトラブルメーカーで、
   旦那のいる年上のアデージョ(笑)、
モニック(杉田かおる)と不倫中だが、ケンカばかり。
   他の連中も、品行方正かというと、そうでもない。
   みんなイライラしている。
 
   分かるんだな、この気持ち(T_T) 忙しくて、他人のことなんか考えられなくなる。
   本当はいい仕事をしたいんだけどね、余裕がなくて、「金のため」を言い訳にするんだ。
   オーナーは自分の王国のことしか考えない。
   コック長は無責任で保身ばかり。
   怒号が飛び交い、ウエイトレスもコックも走り回る。そして事故が起こる。

   休憩後は、コックたちの休憩から始まります。
   アイルランド人の新入り
ケヴィンは、初日から殺人的な仕事にめっちゃ辞めたくなっています。
   ペーターは皆に「夢」について聞くが、自分はそれについて、何も語れない。
   けたたましく笑ってはぐらかして、皆を怒らせ呆れさせる。
     ……仲良くなればいいのにと思いながら見ているけど、うまく行かないんですよね。
   おとなしい人ということになっている菓子職人の
ポールの孤独がまたたまらない。
   仕事が始まればまた厨房は戦場で、合い間に、ペーターとモニックは決定的に破局。
     これも、うまく行けばいいなと思っているのに、駄目なんです(;_:)

   ペーターはショックで仕事が手につかなくなる(ほとんど廃人)。
   以前いいところに勤めていた生意気な新入りウエイトレスが見かねて手を出すと、
   「俺の仕事だ! 手を出すな!」と絶叫。職人のプライドが本能で突き出している。
   ナイフを振り回して、あたりをなぎ払い、皿を割り、客室まで乱入、さらに大騒ぎになります。
   自分も怪我(比較的軽傷っぽい)をするが、「いてーっ」と半泣きになるあたり、
   みっともなくて安心するんですが(この子、切れやすいけど、人殺しはしないなあ)。
   
   ラスト、壊れたぺーターは呻き、身をよじり、怪我をした両手を半ば掲げながら、
   取り憑かれたような目で、歯を食いしばって、客席の中を通って退場します。
   どんな奴でも避けて通るようなヤバい目で、痛々しくて、見てられません。
   (と、言いつつ最後まで目で追う)

   歌舞伎で言えば揚幕近くで、少しずつ表情が変化していき、
   最後には地べたに倒れこんで号泣するんじゃないかという様子になりました。
   (泣いた方がいっそ救われるから、いっそそれを待っていました)
   成宮くんは、こういう芝居、上手いですね。相変わらず滑舌には難があるけど(^_^;)。
   
   この芝居、1950年ごろのイギリス作品で、人種問題が絡んでさらに痛いのです。
   当時植民地だったキプロス人がたくさん働いていて、おそらく差別を受けています。
   他に、アイルランド人、ユダヤ人。敗戦国のドイツ人。
   気になる俳優、高橋洋さん演じるポールはユダヤ人で、
   ペーターたちが歌うおそらく親衛隊の歌に不快感を示し、別のドイツ人の
   「お前はユダヤ人、俺はドイツ人、どっちも辛いよな」という無神経な言葉にキッと睨みつけます。
   (終演後、「あの時、高橋くんがすごい目をしたの…」と言っていた人がいたから、
   私の妄想じゃないです)

   和解、理解しようとしてもどうしてもうまく行かないもどかしさ。
   理解しようとする理性派のキプロス人
ディミトリ(須賀貴匡)になんとなく救いがあります。
   
   演出は蜷川さん。席のすぐそばにスタッフルームのようなところがあったのですが、
   そこにいらっしゃいました。