ラヴェル『ボレロ』 買ったその日に爪傷
  ベートーヴェン『運命』 愁嘆場が長すぎる「運命の落とし穴」
  チャイコフスキイ『大序曲 1812年』1 ロシア人はキ○○イだ(*o*)
  ムソルグスキイ『展覧会の絵』1 キエフの大門 こ…これは廬山昇龍覇!
  ショスタコーヴィチ 交響曲第3番『メーデー』 9月11日の悲劇
  ラヴェル
『ダフニスとクロエ』 印象派の体感
  R.シュトラウス『ツァラツストラはかく語りき』
 爆笑演奏No.1
  
チャイコフスキイ『大序曲 1812年』2 戦争と平和
  レスピーギ
『ローマの松 アッピア街道の松』 乙女の夢 丸つぶれ 



ラヴェル『ボレロ』 買ったその日に爪傷(T_T)

  CD時代になると、こういうアホは少ないと思うのですが、まさに痛恨の一撃でした。
  高校生が、乏しいお小遣いの中から、うんと頑張って買ったレコードです。
  ウキウキしながらフィルムを破って、ケースから出して、袋から出して、
  手が滑りました!(TдT)
  開始後1分経たないあたりから、最後までです!
  3分間に100回プチプチいうんです!
  今は親元に置いたままだし、しばらく聴いていない(つか、聴く気になれない(T_T))ため、
  楽団も指揮者も忘れましたが(たぶんパリ管だったと思います)、
  どこで事故が起きたかは、よーーーーく覚えています。
  食堂の、テレビの前です。ステレオの前で開けていたら変わっていたのかなあ。



ベートーヴェン『運命』 愁嘆場が長すぎる「運命の落とし穴」

  冒頭がめっちゃ有名ですね(^^) うちの両親も大好きでした。
  ベーム&ベルリン・フィルのレコードがあって、ず・ず・ず・ずーーーん……。ず・ず・ず・ずーーーん……。
  延暦寺の除夜の鐘かよ、って感じです。
  (もっともレコードは、ステレオが壊れかかって回転数が乱れると、愉快なテンポになります)
  飽きっぽい子供が聞くのに交響曲は長いので、しばらく第1楽章以外聴いたことがなかったです。
  ところが、実はこの曲は、飽きっぽい短気な大人が聞くにも不向きです。
  こんな超有名曲が? 有名ってことは、好まれているからでは? と思われるでしょうが、
  思うに、一時期のベートーヴェン崇拝による教育の偏重と歪みに起因するのではないか。
  だから、もっと子供にショスタコ聴かせろよ。

  それはともかく、要は第4楽章がくどすぎるのです。
  始まりは、第3楽章からアタッカで、いきなり10号玉の花火が弾けるようで、実に感動的です。
  (うちの母は、カーステレオで定期演奏会のテープを聞かせた時に、ここで泣きました)
  この後も繰り返しはあるけど、まあ、いいです。
  いよいよ大いにかっこよく盛り上がって、いよいよフィナーレかな?と感動しかかったところで、
  「たり〜ら〜り〜ららら〜♪」と、「振り出しに戻れ」的なファゴットとホルン。
  えっ 終わるんじゃなかったの? …ちょっとわだかまるけど、ま、いっか。
  さて本当のラスト。が、これもなかなか終わらねえ。
  …もう、いいよ。とっとと片付けろよ(-。-)y-゜゜゜

  芝居なんかで、自害したとか殺されたとか、死ぬまで長い場合がありますが、
  あんな感じ。(例:曽根崎心中)
  ベートーヴェンは、他の作品もくどいです。(好きな方ごめんなさい)
  これも超有名ないわゆる「第9」もそうですね。
  ほかに、マーラー、チャイコフスキイも「ええ加減死ねや」と思ってしまいます。

  なお、邦人作曲家はいきなりあっけなく終わってびっくりする場合が多いです。



チャイコフスキイ『大序曲 1812年』1 「ロシア人はキ○○イだ(*o*)(ほめ言葉)

  ドストエフスキイ好きの悪友と、初めてロシア人の生演奏を聴きに行った時のことです。
  モスクワ放送管弦楽団で、指揮はチャーミングなカリスマ?俺様?のV.フェドセーエフさん。
  メインがこの曲でした。
  ご存じない方のために、ちょっとご説明いたしますと、
  ナポレオンを追い返してバンザイ、な曲です。
  大砲がどっかんどっかん鳴る中をロシア国歌が流れたりします。派手です(^_^;)v。
  持っているレコードは、キャノン砲を使った演奏だったので、
  コンサートホールでは無理だろうと、そのあたりは期待しておりませんでした。
  ところがどっこい(死語)、
  あんたら全員キャノン砲並みですから!!
  駅までの帰り道、まっすぐ歩けないのです。
  遊園地でコーヒーカップに乗って回し過ぎたのと同じ状態でした。
  フラフラしながら、友人と冒頭の言葉を言いながら帰ってきたのでした。



ムソルグスキイ『展覧会の絵』1 キエフの大門 こ…これは廬山昇龍覇!

  真面目なサイトだと思っていた方、ハイごめんなさい(…いないか)
  これもフェドセーエフさん&モスクワ放送ネタです。
  フェドセーエフさんは、かなり踊ります(前振りです。ご注意)。
  この時は、サントリーのP席1番前…か2番目を取りました。指揮がよく見えて、音が近くていいです♪
  (この時だったと思います。休憩時間にロシア人だー♪とステージを見下ろしていたら、
  ティンパニのおっちゃんに手を振ってもらいました。
  が、「すまん、お前じゃない」と思った私は何気にオヤジを手玉に取っているかもしれない)

  それはさておき、この時の演奏は豪快で楽しいけれど、楽しいな、で終わりそうでした。
  それで十分ではありますが、他にいろいろ面白い体験(いずれ(^^ゞ)があるので、
  少々物足りなかった。
  そしてラストの『キエフの大門』。
  指揮者が豪快に振ると、それに合わせて低弦、低音楽器の位置から中弦、木管、らっぱ、そして高弦へと、
  音が渦を巻いてうねって天に昇りました。
  びっくりしました! 廬山昇龍覇でしたね、あれは。
  指揮者っていうのは英雄だなと思いました。
  牙をむいた龍や集中線をバックに、見開きにしたかったです。



ショスタコーヴィチ 交響曲第3番『メーデー』 9月11日の悲劇

  あの日のニュースは、バンクして突っ込む旅客機、崩れ落ちる超高層ビルの繰り返しでした。
  あの映像はあまりにも凄まじくて、
  見てはならないものを見てしまった恐怖を忘れようと、
  多少大味ではあるものの暗さのなさそうな、景気のいいこの曲をBGMにしました。
  特に、最初の方は楽しそうでいいのです。
  まあ、景気のいい時代の、メーデーの日の、出店もある日比谷公園、
  明るい家族連れを想像してください。(そんないい目に合ったことないけど)

  中間部のクライマックスに、かっこいいところがあるんですよ〜。
  第4番第1楽章(あ、もちろんショスタコーヴィチのね)のメルトダウンを思わせる音の解体があって、
  天を突き刺すようなトランペットがスカーンと登場します。
  音の山の頂点の伸ばしに、弦以外の伸ばしがぎゅーっと乗るのです。

  この音に、バンクする旅客機が連結してしまいました。
  ぐっと右の翼を下に傾けて、まっすぐにWTCに突っ込んでいく機が。
  以来、この曲を聞くと同じ映像が脳裏に浮かびます。
  あの映像を見るたびに、この曲のこの部分が頭に響きます。

  マーラーの10番第1楽章もそうですが、
  高みを目指しすぎる音は、滅びを想像させるのでしょうか。

  この後も、いろいろ楽しいんですがね、この曲。
  最後の最後でこれまた超カッコイイ合唱がズガーンと入ってきたり。
  でも、悲しいことに、今はもう飛行機のイメージしか(涙)



ラヴェル『ダフニスとクロエ』 印象派の体感

  ころっと、思いもかけないど忘れをすることってありますよね。
  いつぞや、そんなふうに「ダフニスとクロエ」のタイトルを忘れてしまったことがありました。
  そのちょっと前にCMで使われていたのに、どうしてもタイトルが出てこない。
  印象派で、ドビュッシーでないからラヴェルだ、ってそこまで分かっているのに、
  まるでそこから先が封印されたかのように出てこないのです。

  何かの用事で親元に帰って、1人で寝ていたときのこと。
  半分起きかけていたのか、なんとなく、夜明けが近いなと思いました。
  空気が違う。
  夜明け前に、地面に音が吸い込まれるように静かになる時があるのです。
  きっと今頃、薄明るくなっている。
  鳥が鳴きだした。東に向かって飛びだした。
  動きが活発になってくる。太陽がじわじわ昇ってきて、今、顔を出す。
  その瞬間、『ダフニスとクロエ』だ!と気付いて、びっくりして飛び起きました。
  ま東向きの窓から外を見たら、本当に太陽が昇るところでした。
  
  今住んでいるところでは、こんな夜明けの感覚はないですねえ……。


R.シュトラウス『ツァラツストラはかく語りき』 爆笑演奏No.1
 

  映画『2001年宇宙の旅』や、テレビのCMにも頻出する超有名曲です。カップヌードル!の幻聴も聞こえそうです。

  地鳴りの中から光が射すように始まる冒頭、プリミティヴなティンパニの連打、
  リヒャルトらしいストイックだけどちょっとこれ見よがしな輝かしい和音のファンファーレで、オルガンが残ります。

  が、ここでオルガンの音とオケの音程が違っていたら!!

  学生時代に部室で聞いた時には、大爆笑が起こりました。
  オルガンのあとにオケだったら、もう少し合わせようと努力できそうなんですがね(笑)。
  いくらなんでもあそこまでは(笑)。
  今でも、この曲がかかるたびに、またオルガンの音がずれてるんじゃないかと気になって、まともには聞けません。

  時間があると、ガラスの破れをカレンダーで誤魔化したような部室(今はありません)にたむろって、
  ○○ノートという書き散らしノートに落書きしたり、音楽を聴いたりしていた頃の思い出の曲(弊害あり)です。
  自分で買ってコレだとかなり腹が立つだろうけど、この手のトンデモ音楽の中で、インパクトはこれが最大でした。



チャイコフスキイ『大序曲 1812年』2 戦争と平和

  いつ頃かは全然思い出せませんが、ラフマニノフと、1812年という2曲プロを聴きに行きました。
  ラフマニノフは退屈で。もしかしたら私、この人キライだったのかも。とも思いました。
  ピアノ協奏曲か、2番だったと思うんだけど、普通に考えれば前プロなんで協奏曲かなと思うんだけど、
  全く思い出せない。
  ちょっと話は逸れますが、そういうことは結構あります。好きだと思い込んでいたけれど苦手だったとか、その逆とか。
  もともと、ラフマニノフは悪い意味で歌謡曲っぽくて、薄いとは思っていました(^^;ゞ
  好きな方にはごめんなさい。
  でも、旋律が綺麗だからいいかとも思っていたのですが、この日はそれすらも駄目だった。
  (はっきり言うと、こういうときは、楽団がカス。)

  で、このころトルストイの『戦争と平和』に夢中でした。
  学生時代に読み始めたものの、当時は文庫がなくて、図書館の重い本だったので持ち歩けずに挫折しました。
  ほぼ10年経ってリベンジしたら、これが面白くて。文字通り寸暇を惜しんで読んでいました。
  このときも、休憩時間にがつんがつん読んでいたのです。まあ、演奏がつまらなくて余韻が残らなかったこともあり。

  途中で、興味本位で対ナポレオン戦争に出征していた主人公の弟が、突然戦死しました。
  子供の頃からやなガキだと思っていましたが、これはないだろう、なくらい馬鹿げた、犬死にの無駄死にでした。
  「悲しいけど、これ戦争なのよね」←使い方違うがな。
  軽薄な貴族の子弟だろうがなんだろうが、人は死ぬ。その他大勢で。
  「戦勝万歳」なんて酔っている足の下に、こういう数え切れない死がある。もう、呆然。

  その直後に、よりによって『1812年』です。
  めでたく鐘なんか聞けませんよ。
  それ以来、この曲を聞く気になれません。



レスピーギ『ローマの松 アッピア街道の松』 乙女の夢 丸つぶれ 

  私は、音楽でいろいろと絵を妄想します。
  特にリアルに情景が浮かぶのが、ショスタコーヴィチの『1905年』と、
  レスピーギの 『ローマの松』の「アッピア街道の松」です。

  「アッピア街道……」は、『松』『祭り』『噴水』のローマ三部作のなかでも、一番有名かもしれません。
  こんな感じです。

  白茶けた乾いたまっすぐの街道に、遠くから、かすかな地響きが聞こえてくる。
  それは戦車を牽くごろごろ音だったり、大量の足音だったりする。

  彼方に小さな土埃の雲。地響きも雲もだんだん大きくなってくる。
  槍の穂先のきらきらした光が、白い土埃の中にきらめき始める。先触れの兵士が駆け抜ける。
  槍の穂先のほかには、赤い小さなローマ風の旗(このへん、想像力がちょっと足りてない)が翻るのが見える。
  戦勝の大軍はどんどん近づいてくる。


  歩兵、騎馬の将軍たち、戦車のきしむ木の車輪。鎧兜が太陽の光を照り返してギラギラと目を射る。
  隊列の中央付近にいるのが皇帝で、颯爽と白馬に乗っている。
  白銀の鎧に深紅のマントが翻り、金髪で、兜はかぶらず、片手で小脇に抱えている。
  皇帝は、アウグストゥスの像のような感じのマッチョな美男で、眉間に縦じわを寄せて威風堂々と通っていく。

  大軍が市内に入るのを待ちきれず、沿道に集まった市民たちは、万歳やら歓喜の声をあげ、
  兵士たちも、いっせいに槍や刀を掲げ、ときの声をあげて、耳を聾するばかり。
  意気揚揚と、しかし縦じわを寄せながら(ここ、ポイント)凱旋していく皇帝。

  めでたしめでたし。

  とまあ、こんなことを考えながら、昔一人でうっとりしていたわけなんですが。
  後年、アッピア街道の松の写真を見る機会に恵まれました。

  日本人の感覚としては、街道の並木といえば、たとえばうちの地元に近い日光街道や中仙道の、
  そりゃあもう雲を突くような立派な大木が並んでいる印象……
  かなり妥協しても、街路樹のイチョウかプラタナスなんかだと思いますが、アッピア街道の松は実に姿がしょぼい!!
  じゃなくて、エノキダケだろうがこれは。しかも、結構まばら;; ショック;; 
  マントを翻すマッチョな美男縦じわ付きが台無しです!


  ちなみに、それはピニョン松という種類で、日本では「笠松」と呼ばれています。
  棒を立てて、その上に三度笠などの笠を乗せたものを想像していただくと、ぴったりくると思います。


  私の夢を返してくれ!!

  しかし、あのへぼい松で、あれだけカッチョエエ音楽を作ったレスピーギの妄想には負けるよ。